幾代餅
結婚に条件の善し悪しは決定打にはならないと何度もお伝えしてきました。
そんな話が落語にもあります。
幾代餅って話です。
日本橋で奉公する清蔵が、錦絵(今でいえば芸能人のブロマイドみたいなの)に描かれている 幾代と言う吉原で人気の花魁に惚れました。
清蔵は、何が何でも幾代に会いたくなり親方に相談しました。
親方は「会えるけど、幾代に会うには15両(今の120万~180万位)はかかるよ。お前が1年頑張って貯めたら何とかなるかも知れない。」と言ってくれました。
清蔵は1年頑張って働き 13両ちょっとを貯めました。その頑張りに親方は2両足してくれました。
お金を持って清蔵は幾代に会いに行きます。
奉公人だと言えば人気のある幾代は会ってくれない可能性もあるので、身分を偽りお金持ちのお坊ちゃんになりすまし、幾代を指名しました。
幾代がやってきて清蔵はもてなしを受けました。
夢のような時間も過ぎ、やがて清蔵は帰らなくてはいけません。
幾代は聞きます。「今度はいつ来てくれますか?」
清蔵は答えます。「来年の今頃には必ず」
幾代は「それは随分先ですね。何でそんなに先なのですか?」
仕方なく清蔵は
「すいません。実はおいらは日本橋に奉公している貧乏人です。あなたに会いたくて1年お金を貯めてやってきたのです。再びお目にかかる為には1年かかりますが、必ず1年後にはやってきますので、その時はまたよろしくお願いします。」
じっと話を聞いていた幾代は「それほどまでに、わちきの事を・・・・」と感激し「来年の3月には年季が明けます。そしたらわちきを女房にしておくんなまし」
と結婚を申し込みます。清蔵は驚きましたが断る理由もありません。是非是非と結婚の約束をし家路につきます。
そして、翌年の3月、年季明けの幾代は清蔵の元に嫁ぎ、2人は餅屋を開いて大いに繁盛したというちょっとイイ話です。