優しさが傷つける

「雨あがる」と言う黒沢明監督の最後の脚本の映画があります。映画自体は黒沢監督がなくなってから撮られたものです。

江戸時代の浪人夫婦の愛情を描いた作品です。

映画の中で優しさゆえに損ばかりしている主人公に妻が言う台詞で

「優しさはときに人を傷つけるのですね。」

と言うのがあります。

主人公は剣術の腕は抜群で剣術勝負しても負けることはありません。強すぎる主人公は勝負の後、負けた相手を優しさゆえにいたわるのですが、その必要以上のいたわりは相手には馬鹿にされたように思える訳です。

男女の仲でも別れる場合の必要以上の情けや言葉はかえって長い時間相手の心を傷つける場合があります。

「私にはもったいないです。」程度までは社交辞令としてもアリかと思いますが、「本当はお別れしたくない。」とか「きっとお別れを後悔すると思います。」なんて言葉になると別れる意味さえよくわからなくなります。

別れを告げられた相手も「まだ脈があるのでは?」と思いたくなりますし、その後に含みを持たせる言葉は避けたほうが良いですね。

実際、このような別れの場合にあるどっちつかずの言葉は、相手を思って発せられると言うよりも、「振った相手に悪く思われたくない」と言う心理が大きい場合が多いのです。

相手を思ってよりも自分を守っての言葉って事です。

男女の仲であれば別れはお互い全て納得の上で円満にとはいかないものです。

その部分は仕方ないと割り切り、相手に未練が残るような言葉こそ相手を長く傷つけてしまうと言うことを理解しましょう!

情け(あんまり)無用です。